HAKUSANライブラリー

HAKUSANの取り組みをより良く理解していただくための知識や用語解説などを掲載しています。

地震の基礎知識

1 地震と地震動

普通「地震」と言えば、地面が急に揺れて、しばらく振動が続き、次第に収まる現象を思い出します。専門家はこの地面の振動を生じさせる現象自体を地震といい、体感する揺れのことを「地震動」と言って区別をします。この場合、「地震」は地球内部で発生したなにか急激な現象のことを言い、その「地震」によって発生する波のことを「地震波」、地震波が地表まで伝わって揺れれば「地震動」となります。

「地震の基礎知識」では地震と地震動は区別しますが、普段の生活などでは言葉の定義をあまり厳密に考える必要はなく、慣用的に使えば良いと思います。

次に、地震の用語を簡単に説明します。

震源,震央,震源距離,震央距離,震源深さ

震源は地震が始まった地点のことです。
震源の直上の地表の地点を震央と言います。
観測点から震源までの距離を震源距離、観測点から震央までの距離を震央距離と言います。
震源深さは震央から震源までの距離のことです。

2 世界の地震活動

下の図は1964年から現在までISC(International Seismological Centre)が震源を決めた地震の分布図です。また、その次の図は2022年6月22日から7月21日の30日間でUSGS(United States Geological Survey)のNational Earthquake Information Center (NEIC)で震源が求められた9435個の震源です。

地震が発生している場所は非常に限られていることがわかります。日本は地震の多発地帯で、地図上では地震のマークで埋め尽くされています。

地震の分布図 参考文献/出典:http://www.isc.ac.uk/ ISCサイトのトップページの挿入図:1964年から現在までの震源分布図

震源位置 参考文献/出典:"USGS All Earthquakes, Past Month", USGS USGSサイトのWebアプリ画面の一部:2022年6月22日から7月21日までの1か月間で発生した地震

プレート 参考文献/出典:THE地震展(資料),国立科学博物館 (2003年) プレートは厚さ100km程度の岩盤で、さまざまな方向に動いている。世界の地震のほとんどはプレート境界で発生している。

この地図をみると、地球表面は震源によっていくつかの大きい領域に分けられることがわかります。このそれぞれの領域をプレートといい、現在プレートが各々様々な方向に動いていることがわかっています。言いかえますと、ほとんどの地震はプレートどうしの境界で発生しています。

(余談)プレートの運動
間接的証拠
  • ・アフリカと南アメリカの形
  • ・プレート発生部(中央海嶺)での地磁気の縞模様
  • ・海底の岩石の年代分布
直接的証拠

VLBI(Very Long Baseline Interferometry)観測

プレート運動の証拠には様々なものがあります。間接的証拠としては、プレートテクトニクスという考え方の発端となった、アフリカ西岸と南アメリカ東岸の形が上げられます。その他間接的にプレートが運動している証拠としては、下図に示すように、海底の岩石の年代が中央海嶺から遠ざかるにつれて古くなっていくことや、中央海嶺付近の岩石に記録された地磁気の縞模様が中央海嶺を中心に対称形をしていることがあげられます。

中央海嶺とは、大洋底のほぼ中央に存在する、大規模な海底山脈のことです。たとえば、大西洋の中央部に南北に縦断している海底山脈は大西洋中央海嶺といい、下の図では、大西洋のちょうど中間に南北に走っている赤いラインです。なお、太平洋の海嶺は太平洋の東部にあり、東太平洋海膨と呼ばれています。

プレートと地殻年齢 参考文献/出典:https://www.ngdc.noaa.gov/mgg/image/crustalimages.html

(余談)大きな地震や被害地震

被害地震については、理科年表(丸善)や地震の事典(朝倉書店)に詳しいリストが載っています。WEB上では、建築研究所のサイトに検索することができるページがあります。
http://iisee.kenken.go.jp/utsu/ 2022年7月21日の閲覧時点で、古代から2017年までの地震を検索することができます。

この資料によると、21世紀(2001年以後)に、死者が1人以上出た地震は世界で354、そのうち死者が100人以上あった地震は48あります。

100人以上死者が出た地震は、インドネシアが8(2004年12月26日スマトラ島沖地震など)、中国が5(2008年5月12日四川地震など)、イランが5(2003年12月26日イラン・バム地震など)があります。日本は2つ(2011年3月11日東北地方太平洋沖地震、2016年4月16日熊本地震)です。

他に死者30万人以上を出した2010年1月12日ハイチ地震などがあります。

ちなみに、同じく2001年から2017年までに発生したM6.5以上の地震波245個、そのうち日本では43個発生しており、世界で一番多くなっています。日本の主な被害地震としては、2003年十勝沖地震、2004年新潟県中越地震、2007年能登半島地震、2007年新潟県中越沖地震、2008年岩手・宮城内陸地震、2011年東北地方太平洋沖地震、2016年熊本地震などがあります。

2017年以後ですと、2018年6月8日大阪府北部地震、大停電が起きた2018年9月6日北海道胆振東部地震などが記憶に新しいかもしれません。

3 日本付近の地震活動

日本付近には、下図にありますように、太平洋プレート、フィリピン海プレート、ユーラシアプレート、北米プレートの4つのプレートがあります。そのうち、太平洋プレートと北米プレートの境界には千島海溝、日本海溝があり、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界には伊豆小笠原海溝があり、フィリピン海プレートとユーラシアプレートの間には駿河トラフ(細長い海底盆地)、南海トラフがあります。

日本付近では海溝に沿って地震の分布が見られ、海溝から遠ざかるにつれて震源の位置が深くなっていきます。

日本付近の震源の深さ分布図 日本付近の震源の深さ分布図 参考文献/出典:地震がわかる! パンフレット,地震調査研究推進本部

4 地震の発生場所

日本付近のプレートの状態と地震の分布からこのような模式図が書けます。海溝にプレートが沈み込んでおり、そのプレート内部やプレート境界で地震が発生するとともに、プレートの沈み込みに伴って陸地が押され、断層(活断層)で地震が発生します。

地球を構成している岩石に力が加わり、耐え切れなくなってずれ(=断層)が生じ、地震が発生します。プレート境界で発生する地震も、断層運動による地震です。

日本付近のプレートと地震の関係

日本付近のプレート境界で発生する地震

日本付近ではプレート境界で多く地震が発生しています。近々発生すると言われている東海地震、東南海地震、南海地震はフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことによって生じます。また、発生確率が非常に高いとされている宮城県沖地震などは、太平洋プレートがユーラシアプレートの下に沈み込むことによって生じます。他にも十勝沖地震など、大きな地震が発生しています。 これらのプレート境界で発生する地震は、百数十年から数十年単位で繰り返し発生します。

日本付近のプレート間地震 参考文献/出典:活断層とは何か,池田 他,東京大学出版会

千島海溝沿いの巨大地震

プレート境界で発生する地震は、しばらく地震が発生していないところ(地震の空白域)で発生する可能性が高いです。図は千島海溝沿いで発生した巨大地震の位置と発生年の分布です。

千島海溝沿いの巨大地震と1973年根室沖地震の震源域 参考文献/出典:活断層とは何か,池田 他,東京大学出版会 *青色部本稿

主要海溝型地震評価

地震調査研究推進本部は、日本付近の主要海溝型活断層評価、及び主要活断層評価の図を作成し、日本における海溝型地震の規模とその発生確率、主要活断層の規模と発生確率を計算しています。海溝型地震は数100年間隔、内陸活断層の地震は1000年かそれ以上の間隔で発生することもあり、おおむね海溝型地震の方が発生確率が高くなっています。

主な海溝型地震の評価結果 参考文献/出典:主な海溝型地震の評価結果,地震調査研究推進本部

主要活断層評価

日本における最近の活断層による地震は、1995年の兵庫県南部地震の被害が甚大でした。今後発生する確率が高いとされている活断層には、糸魚川-静岡構造線などがあげられています。関西の上町断層なども発生したときの被害が甚大であることが予想されるので、しばしば話題に上がっています。

主要活断層の評価結果 参考文献/出典:主要活断層の評価結果,地震調査研究推進本部

過去の大地震で発生した断層の例

1891年濃尾地震で発生した断層。 岐阜県本巣市(旧根尾村)にある断層です。この根尾谷断層には地震断層観察館・記念館があり、図のような断層を見ることができます。上下に6mずれています。

参考:発生確率のイメージ

地震の発生確率の数字を見ても通常ピンと来ないと思いますので、地震調査研究推進本部が出している「発生確率」の比較の図をのせます。例えば、「30年で26%」は、今後30年で交通事故で怪我をする確率と同程度ですので、少しはイメージできるかも知れません。

年発生確率の比較 参考文献/出典:「全国を概観した地震動予測地図」報告書,地震調査研究推進本部 地震調査委員会

5 地震波の種類

地震波には、実体波であるP波やS波と、表面波であるレイリー波やラブ波があります。

P波、S波(実体波)

P波とS波は実体波と呼ばれ、地中内部を伝わる波です。地殻内部ではP波は約5km/s、S波は約3km/sの速度で伝わります。これらの速度は地震波が伝わる物質の性質により、地表付近ではもっと遅くなり、マントルではもっと速くなります。

地震波の伝わり方

特徴:

P波は振動方向と波が伝わる方向が同じで、縦波とも呼ばれます。高振動で小さい揺れであまり増幅しません。

S波は振動方向と波が伝わる方向が直交方向で、横波とも呼ばれます。周波数が建物に影響する成分を持ち、表層で増幅します。

P波、S波ともに普通の地表付近の地質構造下では地表に近くなるほど地震波速度が遅くなるため、スネルの法則により、波の進行方向が立ってきて、下から来るようになります。地震波は縦波であるP波が先に来て、その後横波であるS波が来ます。従って、地表ではまずP波による上下動が体感され、そのあとS波による横揺れが体感されます。地震による被害はS波によるものが大きいです。緊急地震速報はP波の方がS波よりも早く伝わることを利用しています。

断層からの波動伝播 断層からの波動伝播

スネルの法則 スネルの法則

レイリー波、ラブ波(表面波)

レイリー波、ラブ波はいずれも表面波と呼ばれ、主に地表を伝わる波です。伝播速度はS波よりもちょっと遅いくらいです。周波数によって波の伝わる速度が変わります。 表面波の周期は長く、最近話題になっている長周期地震動はこの表面波が関係しています。 長周期地震動については、8章で説明します。

6 震度とマグニチュード

地震の規模をマグニチュード、地震動の大きさを震度で表します。

6-1 震度とは

地震により、ある地点がどのくらい揺れたかを示す尺度ですので、一つの地震でも観測する場所により震度が異なります。

1995年の兵庫県南部地震までは震度は気象庁の当直の職員の体感で発表されていました。現在は地震記録から決められた計算方法により算出された値を計測震度として発表されています。

6-2 マグニチュードとは

地震の震源域で生じた現象の大きさを示す尺度です。

1935年アメリカのリヒターが震源から100km離れた当時の標準地震計が記録した波形の最大振幅の対数をとって表示したのが最初です。

実際には震源から100kmに運良く地震計があることがあまりないことや、測定する地震計の種類がいろいろあることから、リヒターのスケールをいろいろ補正する方法が考案され、使用されてきています。 その計算方法により、気象庁マグニチュードやモーメントマグニチュードというような名前がついています。

地震の大きさ(マグニチュード)の頻度分布

地震の大きさ(マグニチュード)の頻度分布

上の図は、気象庁の震源データページ からデータを取得して作成しました。
地震の規模(マグニチュード)Mと、その発生度数Nの間には、グーテンベルグ-リヒターの式
LogN=a-bM
と呼ばれる統計的な関係があります。上の図は横軸にM、縦軸にlogNをとってありますので、大体M2からM7くらいまで(ちょっと段差がありますが)大体直線に乗っているように見えます。この傾きがいわゆるb値と呼ばれる値となります。

ちなみに1997年から2019年の間で気象庁が発表した地震は
  •  M8級以上-4個 (0.2個/年)
  •  M7級-90個    (4個/年)
  •  M6級-1665個  (72個/年)
  •  M5級-12702個  (552個/年)
  •  M4級-33141個 (1441個/年)
マグニチュードが1小さいと地震の数は大体一桁増えます。
マグニチュードの大きさと頻度

マグニチュードが1違うと、地震のエネルギーが大体30倍異なります。つまり、マグニチュード7はマグニチュード6よりも地震の規模が約30倍大きいことになります。

一方、一つ前のグラフのように、地震発生頻度は大体10倍異なるだけです。

したがって、小さい地震がたくさん発生していても、大きい地震1つ分のエネルギーが解放できないことになります。つまり、小さい地震がたくさん起きたから、大きい地震が起きないというのは誤りです。

参考:マグニチュードと断層の大きさ

地震の規模をあらわすマグニチュードは、地震時にずれる断層の大きさと関係しています。

大体のイメージ

地震の規模断層面の1辺ずれの量
M8100km5m
M730km1.5m
M610km0.5m
参考:1997年から2019年までの23年間のマグニチュード別地震回数 (気象庁)
  • 2000年:有珠山、三宅島噴火、鳥取県西部地震
  • 2003年:9月十勝沖地震
  • 2007年:1月千島列島東方地震、3月能登半島地震、7月新潟県中越沖地震
  • 2011年:3月東北地方太平洋沖地震
M-10123456789
1997年33179732639013702379513346765000054251
1998年997229803316414279415311694664220077252
1999年865223792908412226367410325355620069853
2000年22423184035664251977961186168872500105530
2001年66095070736217143563957117465455100113730
2002年79585616835376137064141115259349700119150
2003年73646310841973169544742132354773310136088
2004年62525268444875185874991135463866400129451
2005年50695540743657165445140121570280500127819
2006年48884957236870139943728136980071400111296
2007年60875518840589152694296148886588410123875
2008年63915314543782164264220134972882300126126
2009年79306529143037157004053110367573400137866
2010年58255849642181169194864138655793600130327
2011年584386121118175631272366556891011169901303810
2012年56126614166672287899269164349866500178695
2013年65175687946748222546217124644665410140377
2014年64315590546574208175383106349765300136738
2015年57635151738728179835038118346276410120755
2016年2505215525189182297086927119621485600307621
2017年313931492287639319998478386613753300282854
2018年256871271967064120249486599916775400249883
2019年278731094995925817572437194714661200219729
208979150267511452304643561342333314112702166590413503076

気象庁の震源データページ から、毎年のデータを取得して作成しました。なお、2016年からはPF法を用いた自動震源決定手法の導入により震源決定総数が増加、2018年からはMatched Filter法を用いた自動震源決定手法の導入により南海トラフ沿いのプレート境界付近で発生する深部低周波地震の震源決定総数が増加したとのことです。 (https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/bulletin/data/hypo/relocate.html

参考:1997年から2009年までの13年間の最大震度の報告回数(気象庁)
期間震度1震度2震度3震度4震度5弱震度5強震度6弱震度6強震度7合計
1997年118843412930541001791
1998年99937411827101001520
1999年6412788120300001023
2000年122073975113331230861017672
2001年101335211028531001512
2002年8213099524400001253
2003年134457319163205102179
2004年13166192177712112212257
2005年105648512238452001712
2006年86234011325300001343
2007年135152017048421202098
2008年121648316334601101904
2009年106839912436301001631
2010年8832949932500001313
2011年64752863976253451744110638
2012年2009816232651240003138
2013年152461218752561002387
2014年132853513446711002052
2015年117447414934550001841
2016年401817766011591856226587
2017年132451914232440002025
2018年137954417867721012179
2019年101539111831602101564
2020年113841211938610001714
2021年158460518144450102424
合計489331898258821615206833615575757

気象庁の震度データベース検索ページで検索して作成しました。

  • 震度7を記録した地震
    • 2004年:新潟県中越地震
    • 2011年:東北地方太平洋沖地震
    • 2016年:熊本地震(2回)
    • 2018年:北海道胆振東部地震

7 地震波の増幅と減衰

地震波が伝わる際に、振幅の増幅や減衰が発生します。

減衰の要因としては、地震波が伝わる間に減衰する、距離減衰があげられます。一般に、震源から遠くなるほど減衰が大きくなります。ただし、震源より遠い地点の方が減衰が少なく、震源より近い地点よりも振幅が大きい「異常震域」が発生する場合もあります。

増幅の要因としては、地表付近の地面の状態の影響が非常に大きいです。特に軟弱地盤においてはS波の速度が遅くなるために、S波振幅が大きくなって増幅する現象がおきます。

7-1 地震波の減衰
  • ・減衰要因:震源からの距離で、遠いほど減衰します。
  • ・距離減衰式としては、司・翠川(1999)が有名です。

    距離減衰式 参考文献/出典:司・翠,PGA、PGVと断層からの距離との関係

7-2 S波の増幅

S波(横波)の速度は地表に近くなるに従い遅くなります。速度が遅くなると波のエネルギーが集中して増幅します。従って、S波速度が遅い堆積層が厚いほど、S波は増幅します。

また、S波は、堆積層と基盤の境界と、地表で重複反射をして、堆積層によって特徴的な周波数成分の波が増幅する場合があります。

7-3 P波の増幅
  • ・P波速度は深さ方向にあまり変化せず、表層ではだいたい1500m/sです。
  • ・この速度はだいたい水のP波速度と一致します。

つまり、表層地盤はだいたい水が飽和しているともいえます。
従って、P波はあまり増幅しません。
ただし、水に不飽和な場合、地下水よりも上の所ではP波速度が落ち、増幅されます。

8 長周期地震動

  • ・周期が数秒以上のゆっくりした地震動のことを長周期地震動と言います。
  • ・2003年十勝沖地震において、苫小牧の石油タンクが揺れて火災が発生したことから注目度が高まっています。

その後、2011年東北地方太平洋沖地震では、都心の高層ビルがゆっくりした周期で揺れている映像を見た人も多いかもしれません。この地震では大阪の咲洲庁舎でも約10分間にわたって大きくゆっくり揺れ続けました。

長周期地震動は、従来の震度階では十分表現できないため、気象庁は新しく長周期地震動階級を導入しました。

それによりますと、地震計の観測データから求めた、減衰定数5%の絶対速度応答スペクトルの周期1.6秒から7.8秒までの間における最大値の階級を、その地点の「長周期地震動階級」としています。

絶対速度応答スペクトルから長周期地震動階級を求めるイメージ。
この場合、長周期地震動階級は4。
参考文献/出典:長周期地震動に関する情報について,気象庁

長周期地震動階級関連解説表 参考文献/出典:長周期地震動に関する情報について,気象庁

長周期地震動階級は2020年9月に気象庁の予報業務許可の対象となりました。

それ以後に実際に長周期震度階4が出たのは2021年2月13日の福島県沖地震(M7.3)で、福島県松木町で観測されました。

https://www.data.jma.go.jp/eew/data/ltpgm_explain/data/past/20210213230800/index.html

参考:データ解析_建物の振動解析
応答スペクトル

地震動に対する応答スペクトルとは、「足元の地面が、ある地震動によって、ある周期(周波数)でどの程度の最大振幅を出すかを計算したもの」で、加速度、速度、変位それぞれに応じて、加速度応答スペクトル、速度応答スペクトル、変位応答スペクトルと言います。 したがって、応答スペクトルは地震動によって異なりますし、同じ地震でも場所によって異なります。

建築物などに入力された地震波は粘性抵抗により減衰します。この粘性抵抗は波の速度に比例しますので、そのような項を含む運動方程式を立てて、ある地震波が入力されたときの、ある周期(周波数)における最大加速度、最大速度、最大変位を求めていきます。

応答スペクトルの計算方法の概念図

ある入力波形に対して、様々な固有周期を持つ減衰定数が等しい物体の応答が最大になる振幅をプロットしていきます。図の例では、固有周期T1の物体の応答波形の最大振幅がA1で、同様に固有周期T2ではA2、固有周期T3ではA3となり、それらの線を結んで一番右の応答スペクトルのグラフができます。もちろん、入力波形が異なれば応答スペクトルも異なります。

長周期地震動階級関連解説表 参考文献/出典:フーリエスペクトルと加速度応答スペクトル,気象庁

建物の固有周期と応答スペクトル
  • ・建物にはそれぞれ揺れやすい周期があり、それを固有周期といいます。
  • ・建築物の固有周期は、経験的に以下の式が使われています。

固有周期をT(秒)、建築物の高さをH(m)とすると、鉄骨造では大体T=0.02H、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造では大体T=0.15Hのようです。

ちなみに普通の建物の高さは、1階あたり約3mです。

T=0.02H をもとに計算しますと、10階建ての鉄筋コンクリートの建物の高さはだいたい3×10で30mとなりますので、固有周期は0.02×30=0.6(秒)、固有周波数は1/0.6≒1.7(Hz)となります。

建築物の減衰定数は数%程度ですので、応答スペクトルの計算の際には減衰定数にこの程度の値を入れるのが普通となっているようです。

ある地震波が入力されたときに、応答スペクトルの計算による卓越周期と、建物の固有周期が一致した場合、その建物が大きく揺れることが予想されます。

8-1 建築物と長周期地震動

周期数秒に及ぶ長周期地震動が問題になるのは、超高層ビルや、ビルのエレベータなどの施設です。建築基準法では高さ60m以上とそれ以下で基準の区別がありますので、高さ60m以上を超高層ビルと言っても差し支えなさそうです。ちなみに前項の式を当てはめてみると、高さ60mのビルの固有周期は約1.2秒となります。また、エレベータは屋上からワイヤーで吊り下げてありますので、固有周期が長くなります。

東北地方太平洋沖地震でも、先に述べた大阪の咲洲庁舎でエレベータ内に閉じ込められた事例が出ています。

https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h24/bousai2012/html/honbun/1b_1h_1s_01_05.htm

参考資料

参考資料(書籍)
  • ・活断層とは何か : 池田安隆, 島崎邦彦, 山崎晴雄 著, 東京大学出版会(1996年)
  • ・THE地震展 (資料) : 国立科学博物館(2003年)
参考資料(論文)
  • ・司、翠川:断層タイプ及び地盤条件を考慮した最大加速度・最大速度の距離減衰式、日本建築学会構造系論文集、523、p63-70、1999
参考資料(WEBサイト)
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